会員の皆様へお知らせ

2025年4月15日

第72回大会のご案内

■場所

東京海洋大学(〒108-8477 東京都港区港南4-5-7)

■日程

2025年6月7日(土)~8日(日)
    6月7日(土):
     10:00~11:30 理事会
     13:00~17:30 大会シンポジウム 「漁業協同組合の過去・現在・未来」
     18:00~20:00 懇親会

    6月8日(日):
     10:00~12:00 一般報告
     12:00~13:00 総 会
     14:00~16:30 ミニシンポジウム 「内水面漁協が今すぐにできること」

■大会参加申し込みと参加費

 大会への参加は無料ですので、特に事前申し込みは必要ありません。

■WEB参加について

■懇親会

第72回大会の懇親会を以下の通り、開催いたします。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

日時:2025年6月7日(土)18:00−20:00
場所:東京海洋大学品川キャンパス大学生協食堂
会費:5,000円(事前振り込み

申し込み方法:以下のURLか右のQRコードから参加申し込みをしてください。
参加申し込み期限:5月31日(定員50名)
https://app.payvent.net/embedded_forms/show/6787834c32c6d0268b247e2b

【大会シンポジウム】

漁業協同組合の過去・現在・未来

コーディネーター 工藤貴史(東京海洋大学) 佐野雅昭(鹿児島大学)

■シンポの趣旨と報告内容

第72回大会シンポジウムは6月7日(土)13:00~17:30に予定しております。詳細は後述いたしますが、今回は「漁協」に焦点を当てました。現実の漁業において、漁協の存在意義が問われています。かつて漁協は漁村におけるオールマイティな存在でした。本来漁協は地域共同体そのものであり、漁場利用調整を巡っては地域をまとめる唯一無二の意思決定機関でもありました。漁業種類ごとに漁協下部に作られた部会組織は地域資源を管理する主体となり、漁業権行使規則などのローカルルールを作成・運用してきました。また民間企業が採算性の欠如を理由にそのサービス網を延長しなかった条件不利地における唯一のサービス提供機関として、販売、購買、金融、保険など漁業経営だけではなく生活支援においても様々なサービスを漁民に提供してきました。

しかし、現在ではそうした状況が大きく変わりつつあります。物流網やネット環境が日本の隅々まで整備され、民間企業のサービス範囲が拡張しました。今では離島の漁民でもAmazonで米国の漁具を簡単に買える時代なのです。グローバリゼーションが徹底的に進み、漁村の生活を変えました。改正漁業法でも、漁協の地位はさまざまな文脈において低下しています。水産政策では個が「もうける」ことや個の「経済成長」が最大目標となり、漁協を中核とした「協働」や漁民と漁村の全体的な「営み」を軽視する傾向が強まっています。漁業者自身も変わりました。スマホとともに産まれたデジタルネイティブと呼ばれるZ世代の漁民も増えており、ネットを通じて世界と繋がっています。漁民個々が直接市場や消費者と繋がることを志向し、ダイレクトなネットワークがいたるところで見られるようになりました。こうした政策や社会の変化は地域共同体である漁協の意義を弱めています。漁協を飛び越えた漁民と消費者、企業の結びつきが増え、地域を越えた漁民の機能的なグループ化が進みました。逆に漁村外からも、環境NPOやネットビジネス企業などから様々な手が漁民個々を抱え込むように伸びています。これまで漁村の中核であった漁協の存在意義やそれに対する帰属意識は、明らかに薄れていると言えるでしょう。

このような状況において、漁協は今その存在意義を問われています。漁協は漁民にとって、これからも絶対に必要な存在、民間企業では代替できないものなのでしょうか。また国民や社会そして漁民にとって、漁協は必要なものなのでしょうか。もしそうであるとするならばそれはなぜなのでしょうか。我々漁業経済研究者は、そうした率直な国民と漁民の問いかけに、誠実かつ丁寧に答える必要があるでしょう。

当シンポジウムでは、現代における漁協の存在意義や今後の展望を検討する機会を設け、今後の当学会における漁協研究を深化・促進させる契機としたいと考えています。そこで漁協の存在意義やそのための課題、分析視角などを、多様なバックグランドを持つ報告者により多元的に提示していただき、会員間で共有することを第1の目的としました。

まず第1報告では濱田武士氏(北海学園大学)にこれまでの漁業論の研究史を概説いただき、それを踏まえた現代的な論点を提示していただきます。次いで第2報告では全国的な漁協の活動を総括している全漁連様より、現代の漁協の全体像や2025年からの新しい運動方針をお話しいただきます。第3報告では鈴木崇史氏(鹿児島大学)から、漁協の販売事業とくに疲弊が進む南九州の小規模産地卸売市場におけるその現状と課題について報告いただきます。第4報告では、阿部富士夫氏(宮城県漁協)より、志津川支所戸倉出張所における指導事業の取り組み、漁協による漁場管理と経営改善についてお話しいただきます。最後の第5報告ではコーディネーターの工藤貴史(東京海洋大学)より、これまでの活動範囲を越えた漁協の新しい取り組みと可能性について、具体的な事例に基づき報告いたします。

漁協は単純で画一的なものではなく、こうした短時間のシンポジウムで議論し尽くせるものではありません。そこで当シンポはまず漁協研究の過去を踏まえ、不十分ではありますが現在の漁協を再確認し、将来の漁協像を各会員それぞれが様々に展望する機会になれば良いと考えております。そこでこういうタイトルとさせていただきました。なお、養殖業や沖合・遠洋漁業は漁協との関わり方が大きく異なることが多いため、今回は漁船漁業特に沿岸漁船漁業に焦点を当てた議論を行いたいと考えています。積極的なご参加をお待ちしております。   


■シンポジウムの会場とプログラム

(報告者やタイトルなど下記内容は変更される可能性があります)
 6月7日(土) 東京海洋大学大講義室
  13:00~13:15 佐野雅昭(鹿児島大学)   代表理事挨拶 及び シンポ趣旨説明
  13:20~13:50 濱田武士(北海学園大学)  「漁協論の研究史から見る現代的課題」
  13:50~14:10 全漁連         「JFグループの新たな運動方針とその課題」
  14:10~14:20 休憩
  14:20~14:40 鈴木崇史(鹿児島大学)       「漁協販売事業の現状と課題」
  14:40~15:00 宮城県漁協志津川支所戸倉出張所
          「漁協による漁場管理と経営改善~宮城県漁協志津川支所戸倉出張所の取り組み」
  15:00~15:20 工藤貴史(東京海洋大学)     「漁村における漁協の今日的役割」
  15:30~17:30 総合討論

【ミニシンポジウム】

内水面漁協が今すぐにできること

企画・司会・コーディネーター:櫻井政和(水産庁)

■日時:6月8(日)14:00~16:30
■会場:東京海洋大学品川キャンパス
■プログラム
 開会(趣旨説明)   櫻井政和 (水産庁)
 報告(いずれも仮題)
 1 中村智幸(水産研究・教育機構)        「内水面漁協の特性と現下の状況・課題」
 2 村瀬和典(郡上漁業協同組合)        「岐阜県郡上漁協の漁場管理と今日的課題」
 3 加賀豊仁(栃木県漁業協同組合連合会)「栃木県漁連の『やったらいいのに会議』の取り組み」
 4 川村幸ノ介(東京海洋大学)     「内水面漁協における電子遊漁券導入の効果と課題」
 5 中川拓郎 (神奈川県水産課)    「神奈川県内の河川におけるアユルアー導入の効果」

 コメント 瀬川貴之 ((一社)Clear Water Project)
      工藤貴史 (東京海洋大学)
 総合討論


■企画の趣旨

第70回大会(2023年)のミニシンポジウム「内水面における漁場管理の展望と課題」において、内水面の漁場管理に関する課題と対応方策を整理し、主に政策的な対応について議論を行った。今回のミニシンポジウムでは、その後の議論の進展や状況の変化、また、本年は国際協同組合年であり、大会シンポジウムにおいて海面の系統組織が取り上げられることも踏まえ、内水面漁協等による実践的な対応について議論する。

内水面の系統組織が持つ特性等を確認した後、現場での具体的な取り組みについて報告いただく。総合討論では、報告のあった事例を多角的に分析・評価することに加え、「現場実態に即して考える」観点から、内水面漁協・漁連から見た時の「取り組みやすさ」や「効率的な情報共有、横展開」を意識して議論する予定としている。

内水面の現場が抱える課題は、構造的な要素に起因するものも多いが、上記の議論を通じて内水面の系統組織による持続的な活動を可能とする途を探りたい。