会員の皆様へお知らせ

2022年4月8日

第69回大会およびシンポジウムの開催について

代表理事の佐野です 遅くなりましたが、2022年度学会大会についてお知らせいたします。
 依然として新型コロナ感染症の影響が多方面に及んでおり、開催形式の判断や学会の開催場所確保に時間を要しました。そのため大会計画も遅れがちとなり、みなさまへのお知らせがこの時期となってしまったことをお詫びいたします。
 この間、当学会はじめ様々な学会や研究集会がリモートで開催されてきましたが、やはり議論の活性は対面開催には及びません。そこで今回は感染状況も下火となる予想の下、下記日程で対面での大会開催を行い、併せて可能な範囲でリモートでの配信も行うハイブリッド形式とすることを計画しました。
 開催場所は鹿児島大学水産学部とします。例年東京海洋大学で開催されてきましたが、毎年となれば現地事務局の負担が大きいため、隔年で地方開催を行うべきという開催地選定原則が理事会および総会で確認されております。ただし先述したとおり新型コロナ感染症の蔓延状況に応じて柔軟かつ迅速な対応が必要となります。そこで2022年度は代表理事が所属する鹿児島大学水産学部で行うことが適切であろうと判断しました。
 シンポジウムは鹿児島開催ということもあり、魚類養殖に焦点を当てたテーマとしました。詳細は後掲の「解題」等をご覧下さい。近年魚類養殖に関しては政策面、貿易面、消費面など様々な角度から活発な議論が行われています。漁業経済学会でも従前からその発展や変化に対応して定期的に取り上げられてきたテーマですが、現在もまた大きな転換期を迎え集中的な議論が必要な時期ではないかと思われます。養殖業研究者だけではなく養殖政策や養殖産業現場の第一線に立つ報告者を迎え、最先端の知見を踏まえた将来展望を議論できればと思いますのでご期待下さい。
 また、シンポジウムおよび一般報告につきましてはZoomを用いたリモート参加も可とするハイブリッド形式を予定しています。会員のみなさまには鹿児島大学までおいでいただき、対面で発表あるいは議論にご参加いただきたいところではありますが、そうもいかない状況です。会員各位のご都合に応じて適切な方法でご参加いただければ有り難いです。また申し訳ありませんが、理事会および総会は対面で開催したいと思います。内容は後日HP上に掲載いたしますので、ご確認の上ご意見等ございましたら事務局までお寄せ下さい。昨今の状況に鑑み、何卒ご容赦下さいますようお願い申し上げます。
 ただし、開催時期における感染状況によっては、全ての大会コンテンツが完全リモート開催となることも十分に予想されます。こうした開催情報はHPで逐次お知らせしていきますので、そちらをチェックして下さいますようお願い申し上げます。また鹿児島大会の会場や交通・宿泊などに関する詳細な案内およびシンポジウム各報告の要旨はHP上で発信したいと思います。案内は4月中旬、要旨は5月上旬に掲載しますので、そちらをご覧下さい。

(代表理事 佐野雅昭 事務局一同)

【第69回大会の案内】

場 所:鹿児島大学水産学部
日 程:2022年6月11日(土)~12日(日)
6月11日(土) 
 10:00~11:30 理事会(講義棟4号館12号教室)
 13:00~17:00 シンポジウム(同23号教室)<同時リモート開催>
 18:00~20:00 懇親会(状況に応じて中止)
6月12日(日)
  9:30~12:00 一般報告  9:30~12:00(同21、22、23号教室)<同時リモート開催>
 12:10~13:00  総 会(同23号教室)

【参加申込方法】

対面での参加は当日受け付けます。またシンポジウムおよび一般報告へのリモート参加に関する詳細および懇親会に関する詳細などは後日HPに掲載いたします。なお今回大会より参加費は無料となりました。非会員の方々もお誘い合わせの上、積極的にご参加下さい。

【シンポジウム解題】

魚類養殖業の現状と課題~ブリ類養殖とマダイ養殖の過去・現在・未来

長谷川健二(福井県立大学名誉教授)・佐野雅昭(鹿児島大学水産学部)

養殖業は令和元年時点で海面漁業生産量の約22%、同生産額の37%を占めている。また生産額における割合は近年急激に上昇しており、沿岸漁業層の経営においてその重要性は高まりつつある。養殖業はブリ類やマダイなどの魚類養殖を中心とする給餌養殖とノリ養殖やホタテガイ養殖などの無給餌養殖に分かれるが、近年ではその将来的な可能性や高い市場性から、魚類養殖への注目が高まっている。水産政策改革においても魚類養殖の振興が焦点の1つとなっており、区画漁業権制度にもかなり変更が加えられた。
 しかし日本の魚類養殖が順調に発展しているかと言えば、そうではない。近年では量的にも金額的にも全体の成長は鈍化している。魚類養殖の中心をなすブリ類養殖やマダイ養殖では、過去に急激な成長を遂げたが、全体的生産規模は既にピークを大きく過ぎ、経営体数も減少している。しかし、その一方でこれら養殖業には現在多様な資本の参入も見られ、なかでも新規に参入した大規模経営である大手水産会社の養殖魚類生産のシェアが拡大してきている。こうして従来の在村型の中小企業経営と並んで、経営体数の減少が著しい家族労働力中心の小規模漁家経営が併存する複雑な生産構造となりつつある。そして、こうした国内魚類養殖業の動向を考慮に入れた場合、現在、生産力の担い手は、これまでの発展を支えてきた小規模漁家経営の退出によって生じた“空き漁場”の集中、漁場の沖合化などによる規模を拡大した在村型の中小企業的経営、そして新規参入の大手水産会社に移行する過程にあるように見える。
 近年の国内の魚類養殖業は、シェ-レ現象(=鋏状格差の拡大-魚価安に対し餌料費などのコストの上昇)の拡大などの厳しい経済環境によって経営の悪化が言われて久しい。このような国内経済の状況の下で日本の魚類養殖業は、今後どのような方向に進んでいくのであろうか。今後の持続的成長は実現可能なのか。またそうした変化は沿岸漁村や漁家経営に何をもたらすのであろうか。
 本シンポジウムでは漁業経済学の視点に立ち、こうした転換期にある日本の魚類養殖業の現状を多様な観点から把握・理解し、同時に全体を総括することで魚類養殖業の将来展望を考える上での基盤的知見を学界に提供したいと考える。そのために、以下のようないずれも実態に迫る報告を準備している。
 なお、本シンポジウムはその対象をブリ養殖およびマダイ養殖に絞り込んでいる。日本の魚類養殖はその歴史的経緯が多様であり、現時点における発展段階が大きく異なる。ここでは最も古く現在は成熟期にあり、数量的にも魚類養殖の大宗を占めている上記2養殖魚種を議論の対象とすることが相応しいと考えた。
 第1報告はシンポジウム解題とし、シンポジウムの目的を述べるとともにこれまでの漁業経済学における数十年に亘る魚類養殖研究の発展や成果を振り返り、現時点での到達点と今後の養殖研究に期待される課題や論点を提示したい。以降の報告内容はこうした魚類養殖業研究に関する研究蓄積を前提として理解することが求められる。
 第2報告では現在の養殖業政策を概観する。2019年漁業法改正そして水産政策改革の焦点の1つが養殖業の発展促進にあったことは明らかである。その文脈の中で展開しつつある「養殖業成長産業化総合戦略」とはどのようなものか。そこではどのような道筋で何を実現しようとしているのか。また漁協の自主的漁場管理を規程した「持続的養殖生産確保法」との整合性、また漁業共済制度や生産ガイドラインなどとの整合性はどうか。政策遂行現場からのリアルな報告を期待する。
 第3報告では生産現場の現状を概観したい。ブリ類養殖においては人工種苗導入の困難性、国際的な魚粉市場の逼迫と餌料価格の高騰、労働力不足など生産局面においても依然として課題は多い。しかしそれを補うための様々な機械化・IT化・自動化などの革新的技術の導入、生産規模の零細性・経営の小規模性を土台としながらもそうした限界を克服すべく行われているきめ細かな経営対応など、経営体内外における新たな取り組みも進んでいる。生産現場におけるこうした現状や技術的・経営的課題をここで整理し、共有したい。
 第4報告では養殖魚の市場問題のうち、輸出市場に関する現状を取り上げる。中でも最大の輸出品目であるブリを事例として取り上げ、養殖ブリの輸出に関する生産局面、産地加工局面、国際物流局面、米国市場での販売局面などについての現状や課題を整理する。養殖業成長産業化総合戦略の成否を決めるのは輸出拡大如何である。実情に精通した報告者からリアルな状況を学びたい。
 第5報告では養殖魚の市場問題のうち、国内市場における加工処理に焦点を当てる。流通末端の小売業者やチェーン外食ではコスト面から加工機能が大きく縮小されている。他方で流通局面における加工機能向上が強く求められており、労働集約的な加工部門をサプライチェーンのどこに位置づければ最も効率的となるか、が問われている。マダイを事例として取り上げ、最新の状況に迫りたい。
 第6報告では輸出市場アクセスでは今や当然であり、今後は一部国内市場でもその取得が求められるようになる可能性がある環境認証について、国際的に最も多くのケースをカバーしているASCを中心にその実態を理解したい。魚類養殖における環境認証の意義や課題、漁船漁業におけるそれとの違い、輸出市場における重要性、日本市場における今後の発展可能性などに関する報告が期待される。

 以上の6報告は多様な専門分野に亘る幅広く同時に奥深い内容から構成されており、短時間のシンポジウムだけでは総合的に理解することが困難であることが予想される。しかしそれらの内容は現実の魚類養殖産業において相互に強く関連しており、どこかだけを切りとった議論、どこかを切り捨てた議論は有用なものとはならないだろう。困難ではあるが、報告者やコメンターそしてフロアを交えた双方向の議論を活発に行うことで、多くの参加者が総合的理解に近づけることを期待している。そして今後の漁業経済学分野における魚類養殖研究の通過点としてその研究史に僅かでも貢献し、同時に日本型魚類養殖業の将来展望を描くことができれば、企画した者として望外の喜びである。多くのみなさまの聴講と積極的な議論への参加を期待している。

【シンポジウム・プログラム】

テーマ:魚類養殖業の現状と課題~ブリ類養殖とマダイ養殖の過去・現在・未来
コーディネイター:長谷川健二(福井県立大学名誉教授)・佐野雅昭(鹿児島大学水産学部)

開会挨拶:代表理事 佐野雅昭(鹿児島大学水産学部)
第1報告:(13:10~13:30)シンポジウム解題~魚類養殖業の展開過程と新たな課題
      長谷川健二(福井県立大学名誉教授)
第2報告:(13:30~13:50)「養殖業成長産業化総合戦略」の概要とその課題
      櫻井政和(水産庁栽培養殖課)
第3報告:(13:50~14:10)ブリ類養殖業における生産現場の現状と課題
      中平博史(全国海水養魚協会)
第4報告:(14:20~14:40)養殖ブリ類の輸出とその課題
      増永勇治(グローバルオーシャンワークス)
第5報告:(14:40~15:00)マダイ養殖業における産地加工拡張とサプライチェーンの変革
      久賀みず保(鹿児島大学水産学部)
第6報告:(15:00~15:20)魚類養殖における環境認証の現状と課題
      山本光治(ASCジャパン)
総合討論:(15:30~17:00)
 司会:佐野雅昭(鹿児島大学水産学部)・三木奈都子(水産研究・教育機構)

【一般報告の受付】

一般報告は1.対面での報告、2.Zoomを利用したリモートでの報告の2通りで開催します。いずれも以下の内容を示された期日までにメールで事務局甫喜本あてに提出して下さい。タイトル、要旨ともにワードファイルで作成し、ファイルに添付する形式でご提出願います。なおリモートでの報告は報告者によるパワーポイントの画面共有を基本としますのでご準備ください。
 また、海外漁業に関するセッションを計画しています。海外漁業に関係する研究およびシンポジウム(魚類養殖)に関係する研究の発表を是非お願いいたします。
◆タイトル受付 締切日:4月29日(金)必着
 タイトルに加え、報告者名、報告者名の所属をお書きください。また対面かリモートのいずれの発表形式を希望するか
 を書き添えてください。
◆報告要旨受付 締切日:5月6日(金)必着
 要旨は1,600字以内で作成してください。
◆提出先:事務局 甫喜本 憲(fishecono◎gmail.com、スパムメール防止のため、@を◎にしています。)
※メールの件名は「漁経2022一般報告・報告者名」としてください(左記の「」は不要です。)。
※一般報告内容の会誌掲載を進めております。報告論文としての学会誌掲載を希望される方は7月20日までに、HP掲載の「漁業経済研究投稿規定(2019年12月25日改訂版)」に基づく形式で、送り状とともに学会編集委員会(gyokeied◎gmai.com、スパムメール防止のため、@を◎にしています。)まで投稿原稿をお送りください。また英語での報告・投稿も受け付けています。
※リモートでの発表を希望される会員に対しましては、後日発表用のZoom情報をメールでお知らせいたしますのでお待ちください。

【理事会等に関して】

会計監査、学会賞選考委員会、理事会につきましては別途委員の皆様に開催案内のメールを出させていただきます。お待ちください。

【学会賞候補者の推薦】

学会賞候補者の推薦を募集しています。2022年5月末までに候補対象者名と理由を記して事務局(甫喜本憲)までお送り下さい。お送り頂いたものを学会賞選考委員会に提出します。送付は以下事務局のメールアドレスにお願いいたします。fishecono◎gmail.com(スパムメール防止のため、@を◎にしています)なお、メールの件名に、「漁経2022学会賞推薦・送信者名」と明記ください。よろしくお願いいたします。